2017年9月

男/Man

修羅街挽歌

糞尿と塩素の匂いが垂れ下がる小路。
朽ちた偶像にステンドグラスの光。
毒ネズミの赤い眼光の列。
僕らの街の冷えきった喉元。

酢になったワインだらけの貯蔵庫。
黒ずんだ紙束がビルから投げ捨てられ、
カラスの群れが燃えながら飛ぶ。
僕らの街の底なしの胃袋。

母と妹が焼かれた街、
息子同士が撃ち逢った墓所。
日課を漁るゴーストドッグ。
僕らの街の曲がりくねったハラワタ。

外へと続く暗く長い回廊。
頼る光も影もとうに絶え、風の音もすでに尽きた。

暗く永い回廊。
暗く永い回廊。
回廊。
回廊。
回廊。
回廊。
帰ろうか?(帰れるの?)
進もうか?(進めるの?)
はぐれた仲間の声だけにまどろむ

竜胆ヒマワリ


名もなき者よ:2016/10/15
秋の修羅 

愚か者よと人は言う
愚鈍で頑固でピンボケで
哀しむ心も持ちやしない
ならば私は鋼となろう

剣を通さず
決して折れず
押しても動かず
引いても動かず
人がどんなに叩いても
痣すらできず
血など流さず
全てを忘れて
鋼となろう。



竜胆ヒマワリ:2016/10/17
オリ春コン  

我らノームの長老は
思考回路が開くたび
おでこのヒンディ固くなる

終いにゃ生きた結晶柱さ
自分の脳が動きつつ
自分の体が動きつつ
自分自身はどこかに消える

さぁ見やれ
この星とりまく
オリハルコンの氷柱の群れを
あれこそノームの限界天
試行海路の道標

さぁ見やれ
地に這いつくばった修羅の群れども
限界点は見定まり
あがくイトマも
わめくイトマも
とうに昔に尽き果てた

これから降るのは
砕けて尖った遺跡の残骸
地に潜り固くなっても
空を見すえて避け続けても
生き残るすべは蜘蛛の糸のみ…

魔鳥ハルファス

戦争準備の凶鳥ハルファス/Halphas

中世キリスト教『ゴエティア』

血のように赤い目に、屍臭を漂わせたカモ・カラス・コウノトリ・ハトの姿。または片足を露出した緑衣のかすれた声の女性。戦争全般・要塞の建築・武器の補給・兵士&艦船の適格で迅速な派遣・人々に戦争を吹き込むのを得意とし、剣の腕もあります。これらの技術を人間に無償で与えるのは、彼が望むのは流血そのものだからです。高慢・高貴・富・権力・うぬぼれ・無礼を担当します。【wiki】


宴結び:2010/04/28
カノン 

さあ今だ撃つのだ 猟人よ 侵略者よ
 汝が追いかけて 追いかけて
  汝が追いかけて 追いかけて
           追いかけて
銃口を向けて 砲塔を並べよ
引き金を引き 火縄に灯せば

嗚呼、今だ討つのだ 弾丸よ砲弾よ散弾よ榴弾よ
 汝が追いかけて 汝が追いかけて
  汝が追いかけて 汝が追いかけて
              追いかけてくる
 我に迫りくる 我に迫りくる
  汝が追いかけて 汝が追いついて
              肉に触れ

きっとそれは我を打つ
 繰り返し 繰り返し
      何度も



竜胆ヒマワリ:2010/04/29
 人間は歴史から
「人間は歴史から学ばない」ことを学んだ 

引き金の端正なタイピング
頭蓋を跳弾するリズム
崩れた膝のステップ
破れた動脈の最後のシャウト

………………………………

魂への畏怖と罪は鎮静され
繰り返し間引かれる生誕のタイミング
繰り返し世界を商談するイズム
繰り返しクズれる株でスリップ
繰り返し焼かれる道楽なベストショット

………………………………

耳をすますべきはあの一瞬の吐息
目をさますべきはその怠惰な鎮静歌



宴結び:2010/04/29
ロンド 

 くりかえしのうた

砲身をならべて 進めや進め
何度でも 何度でも

喉元をすぎれば血の味だって忘れる
瘡蓋の下からじわりじわりと噴出す膿の泣き声に一小節

方針をそろえて 進めや進め
幾度でも 幾度でも

軍靴の音を軍歌の声を
急ぐのだ、いや待つのだ?
未だ知ることのない骨へと響く一小節

放心をたたえて 進めや進め
空虚でも 空虚でも

荒廃した大地と銃声の合間
そこに確かに残るリフレイン
肌は破けて皮となりぴりぴりばりばりと裂ける一小節

疱疹をかかえて 進めや進め
最後でも 最後でも

滴る汁を飲み干して
溢れる汗は飲み下し
インスピレーションは神経に電気を流し
尿と流して一小節

  (*くりかえし)



竜胆ヒマワリ:2010/04/30
競争曲 

金も銀も使いはたし
角も槍もとうに折れ
王も玉も捕れてなお
9×9の枠を掘削しながら工兵たちのゲームは続き
ゼロフラットな荒野へと零れ落ちてゆく

眠っても同じ景色
反転の転轍機は遥か彼方か?
通り過ぎてはなかろうが?
あの薄曇りは反撃の狼煙の名残じゃないのか?
この怒号とデマと呟きは復活の呪文の欠片じゃないのか?
起きても同じ景色

頭の中の∞☓∞の基盤
退屈しのいで頭蓋を囲み
薄れて破れた海馬から
毎夜絶えない革新の歌・保守の歌
狂想曲が来越えてくる
ア・セッション!

新しい一歩
新しい一手
新しい朝

魔鳥マルファス

戦争準備の凶鳥マルファス/Malphas

中世キリスト教『ゴエティア』

大きな鴉。または宝石を散りばめたベルベット姿の浅黒い肌の男の姿。しゃがれ声で大嘘ばかり並べ、生け贄を捧げたとたんに不誠実になるので注意してください。家屋や塔の建築はピカイチ・腕のいい職人の紹介・建築物の破壊・読心術・広範囲の言語学・詩作・文学を得意とし、理性能力・推論・不安定を担当します。ソロモン王の神殿では棟梁だったのかもしれません。【wiki】


名もなき者よ:2016/09/21
あゝ大砲 

あゝ大砲
一つうちゃ門が崩れ
二つうちゃ家が吹き飛ぶ
三つうちゃ十字架をなぎ倒す
おお大砲
これが人の世の曙か
人が神に勝ったのよ



ローロー:2016/10/04
やあ大砲 

吹き飛ばして 黙らせろ
大鉛のシャラップ

子犬だって蹴飛ばせる
さあ無情のフィニッシュ

右肩そのまま持っていかれた
右肩下がりの ひめゆりの
手をとり飛び込む日差しの断崖 
花いちもんめのスーサイド

また月日が過ぎれば

惑星間の弾道閃光
銀河模型のバタリオン
民間企業の武器商人の
笑顔で振り撒く GOGOカルマ

鳩よ舞え
花よ散れ
子らよ歌えよ
パッヘルベルの

肉のない
熱のない
意志もかきけす
パッヘルベルの

少年

少年/Boy

mystar-min

裸でわたしは母の胎をでた。裸でわたしはかしこに帰ろう。
ヨブ記1章21節

本当の魔法とは時間が流れることだ。
『刑務所のリタ・ヘイワース』S・キング

カエル魂を忘れるな

風呼びの踊り子

誰が風を見たでせう
僕もあなたも見やしない
けれど木の葉をふるわせて
風は通り抜けてゆく
『風』西条八十/クリスチナ ロッセティ

風は思いのままに吹く。
あなたはその音を聞くが、
それがどこから来て、どこへ行くかを知らない。
すベて霊から生まれる人もそのようである。
ヨハネ福音書三章八節


浅皿小僧:2009/09/09
世界で一番強い人 

世界で一番強い人とは、器のような人だと思う。
全ての思いを表に出さず、自分の中で終わらせる人。
嫌な事でも表に出さず、嬉しい時も一人で笑い。
思いを他人に零す事無く、全て自分に注ぎ切れる人。
全ての事を受け入れられる。
その人はとても強い人。



ブラフマン:2009/09/16
あいまみえる 

山で悟った豪玉仏陀。
挑戦のため里に出る。
俗世に塗(まみ)れてアレが成せるか?
カーストの中でソレが通るか?

心を色に変え弟子にぶつけ、
技を無に化えバラモンをかわし、
体を空に還え衆生に広がる。

そして2500年と3500マイル 私の寝耳に注がれる。
天下無双、汁を飲み干し、器も振る舞え。

五芒星デカラビア

謎の五芒星デカラビア/Decarabia

五芒星の中の輝く星、または裸の老人の姿。公爵として悪霊30個師団を率います。鳥を操る・人を透明にする・奸計の才を授ける・植物学・鉱物学を得意とし、優柔不断・裏切り・降伏を担当します。【wiki】


ローロー:2017/08/20
人工衛星から見たキャンパス 

この安寧 この衛生と引き換えに
世界のどこかを飢餓に
この勝利 この名声と引き換えに
世界のどこかを塵芥に

じきに沈む島
なくなる存在
感じられなくなる現実の一輪
そのいたいけを贄に



竜胆ヒマワリ:2017/08/22
戻ってくる場所はもとの故郷 

灼熱の新星は
やがて水の星となり、 
巨竜と氷河の時代(とき)を越え、 
今や千年王国夢見る猿の惑星。

きょうも猿人の轟音が響く! その習いに従い、
勝利するのは無限を信じる声高き者たち。
(産めよ!増やせよ!地に満ちよ!)
(モットーもっと!もとモットー
!)
(ゼーゼーヒーヒー是々ヒーヒー!)

生贄となるのは無常を知る声細き者たち。
(…どの顔もいずれは年老い、)
(…どの国家も
やがては傾き、)
(…どの山河も終いに果てる。)

いまキャンバスに描くべきは
夢幻(ゆめまぼろし)か?
それとも真の理(ことわり)か?



ローロー:2017/08/22
次のためのパンドラ ▼

Xdayに打ち上げられた脱出ポッドの中で
暗黒に抱かれながら眠った

次は過ちを繰り返さないためのノウハウと
火の雨に飲まれて消えた同朋たちの瞳
抱きながら
次の星へ
目尻に涙浮かべて

なぜ僕だけが
星座のふもとを過ぎ去って
なぜ僕だけが
眠りながら 赤子に孵る

母星を離れた衛星に住む
人間嫌いのハーミットのもとへ



竜胆ヒマワリ:2017/08/25
エピメテウスの方舟 

三分であなたを壊して、
三分であなたを改めて、
三分であなたを造って。
今度の夫は浮つかないでしょ

三分でわたしを壊して、
三分でわたしを改めて、
三分でわたしを造って。
今度の妻も微笑んでるのは口元だけ

災厄と希望を結んでも
生まれてくるのはやっぱり災厄か希望なの
ふたりに似てない子
だれにも似てない子
ひとには似てない子

ハーミット・ピープル
透明なあの子を見つけて
ハーミット・ピープル
透明なあの子を育てて
ハーミット・ピープル
名付けるまえに消えたあの子を…